はじめに
「よいチームってどうやって作るんだろう?」
この問いに対する答えは、実は複雑なマネジメント理論や高度なフレームワークにあるわけではありません。むしろ、チームの全員が心がけるべき シンプルな原則 にこそ、本質が隠れています。
組織論やチームビルディングの本を読むと、さまざまな手法や理論が紹介されていますが、それらの根底には共通する考え方があります。今回は、私が実践してきた中で特に重要だと感じている 3つの原則 を紹介します。
これらは管理職だけが意識すればよいものではなく、チームのメンバー全員が共有することで、初めて効果を発揮します。肩書きに関わらず、一人ひとりが実践できる原則です。
原則1:自らの責任で行う
「言われたからやる」という罠
チームで働いていると、誰かからの指示を受けて仕事をすることは日常茶飯事です。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
「言われたからやる」という姿勢は、実は誰のためにもなりません。
上司から指示を受けた、顧客から依頼された、他部署から要望があった──これらはすべて、あくまで トリガー(きっかけ) に過ぎません。重要なのは、実行に移した瞬間から、それは あなた自身の責任 になるということです。
納得するまで聞く、理解してから動く
では、どうすればよいのでしょうか?答えはシンプルです:
- 指示の背景や目的を理解する
- 納得できない点があれば、納得いくまで質問する
- 自分が「これをやるべきだ」と思えるまで考える
- そして、自分の意志で実行に移す
成果はあなたのものです。同様に、失敗もあなたの責任です。だからこそ、納得した上で動くことが重要なのです。
中間管理職における責任
これは中間管理職においても同じです。上層部から降りてきた方針を、そのまま部下に「やれ」と伝えるだけでは不十分です。
まず自分自身がその方針を理解し、納得し、必要であれば上層部と議論する。その上で、自分の言葉で部下に説明する。この過程を経て初めて、健全な指示系統が成り立ちます。
質問を歓迎する文化
このアプローチが機能するためには、組織全体で以下の文化を育む必要があります:
- 納得できない指示は、納得できるまで質問することを良しとする
- マネージャーは「言ってるんだからやれ」ではなく、納得いくまで説明する責任を持つ
- 必要であれば、上下関係なく議論する
これは単なる理想論ではありません。実際に実践可能な、そして実践すべき原則です。
原則2:行間を読まない
日本の「行間文化」の問題点
日本のビジネスシーンでよく見られる光景があります:
「なんでこんなことしたの?」 「これ、考えて作った?」 「本当にこれでいいと思ってる?」
一見すると質問に見えますが、実はこれらは 疑問文の形をした叱責 です。相手に何かを気づかせようとする、いわゆる「行間を読ませる」コミュニケーションです。
なぜ行間を読ませてはいけないのか
このコミュニケーションスタイルには、深刻な問題があります:
- 意図が正確に伝わらない :相手が別の解釈をする可能性がある
- 心理的安全性を損なう :質問することへの恐怖心を植え付ける
- 学習機会を奪う :何が問題だったのか明確にならない
特に問題なのは、このスタイルが蔓延すると、チームメンバーが 純粋な質問をすることをためらう ようになることです。「これは本当に質問?それとも叱責?」と考えてしまうのです。
明確に使い分ける
解決策は明確です:
- 質問は質問 :情報を得たい、理解を深めたいときに使う
- フィードバックはフィードバック :改善してほしい点を伝えるときに使う
例えば:
NG(行間を読ませる) : 「これで本当にユーザーが満足すると思う?」
OK(フィードバックとして伝える) : 「この実装だと、〇〇のケースでユーザーが困ると思う。△△の対応を追加してほしい」
OK(質問として聞く) : 「このケースでのユーザー体験について、どう考えてる?」
お互いに理解する
この原則が機能するためには、チーム全員が以下を理解する必要があります:
- 質問は情報を得るためのもので、責められているわけではない
- フィードバックは成長のためのもので、人格否定ではない
- どちらも、チームをよくするための 建設的なコミュニケーション である
これは 心理的安全性 の話とも密接に関係しています。お互いを尊重し、明確にコミュニケーションすることで、チームは強くなります。
原則3:事業に向き合う
KPIの向こう側にあるもの
最後の原則は、少し抽象的に聞こえるかもしれません。しかし、これが最も重要だと私は考えています。
事業に向き合う とは、具体的には何を意味するのでしょうか?
- KPIを見る
- そのKPIが何を表しているか理解する
- つまり、 顧客価値 を見続ける
KPIは単なる数字ではありません。それは顧客の行動や満足度を反映した、事業の健康状態を示すバイタルサインです。日々の業務に追われる中で、この本質を見失ってはいけません。
流れ星と願いごとの話
ここで、ある寓話を紹介させてください。
「流れ星を見た時に、とっさに願い事を3回唱えると願いが叶う」
これを迷信だと思いますか?実は、この言い伝えには深い意味があります。
流れ星が見えている時間は、わずか数秒です。 その短い瞬間に、とっさに願い事を3回唱えることができるでしょうか?
できる人は、普段からその願いをずっと考えている人です。いつも心の中にあるから、咄嗟に出てくる。だからこそ、その願いは叶う可能性が高いのです。
咄嗟に答えられますか?
同じことが、事業についても言えます:
- あなたのチームの主要なKPIは何ですか?
- それは今週、どう推移していますか?
- 顧客が最も価値を感じているのは、どの機能ですか?
咄嗟に聞かれて、すぐに答えられるでしょうか?
答えられるなら、あなたは本当に事業に向き合えています。普段からずっと考えているからこそ、すぐに出てくる。そういう人が集まったチームは、強いのです。
日常に組み込む
これは暗記の問題ではありません。数字を覚えることが目的ではなく、 常に顧客と事業のことを考え続ける という姿勢が重要なのです。
具体的には:
- 朝、KPIダッシュボードを確認する習慣をつける
- チームミーティングで、必ず事業指標について話す
- 意思決定の際、「これは顧客価値を高めるか?」と問う
- 顧客の声(フィードバック、問い合わせなど)に触れる機会を持つ
こうした日々の積み重ねが、流れ星に願いを唱えられる状態を作り出します。
3つの原則がもたらすチーム像
これら3つの原則を全員が実践すると、どんなチームになるでしょうか?
自律的に動けるチーム
「自らの責任で行う」 が根付くと、メンバーは受け身ではなく能動的になります。指示待ちではなく、自分で考え、判断し、動く。マイクロマネジメントは不要になり、マネージャーは本来の役割である 方向性の提示 や 障害の除去 に集中できます。
率直なコミュニケーションができるチーム
「行間を読まない」 を実践すると、メンバーは安心して質問できます。わからないことを「わからない」と言える。意見を率直に述べられる。これにより、情報の共有がスムーズになり、誤解やミスコミュニケーションが減ります。
顧客志向のチーム
「事業に向き合う」 ことで、チームの視線は常に顧客に向きます。技術のための技術、プロセスのためのプロセスではなく、すべての活動が「顧客価値の向上」という共通のゴールに収束します。これが、真の意味での チームの一体感 を生み出します。
結果として生まれるもの
これらが組み合わさると:
- 高い生産性 :無駄なやり取りが減り、本質的な仕事に集中できる
- 速い意思決定 :情報が共有され、各自が判断できる
- 継続的な改善 :問題を早期に発見し、率直に議論できる
- メンバーの成長 :責任を持って仕事をすることで、スキルと経験が蓄積される
結果として、 成果を出し続けられる、持続可能なチーム が生まれます。
まとめ
よいチームを作るための3つの原則を振り返ります:
- 自らの責任で行う :指示はトリガーに過ぎない。納得し、理解し、自分の意志で動く
- 行間を読まない :質問は質問、フィードバックはフィードバック。明確に使い分け、心理的安全性を育む
- 事業に向き合う :KPIの向こう側にある顧客価値を見続ける。流れ星に願いを唱えられるくらい、常に考え続ける
これらは、特別なスキルやツールを必要としません。今日から、あなた自身が実践できることばかりです。
もちろん、文化を変えるには時間がかかります。一朝一夕には成果は出ません。しかし、一人ひとりが意識を変え、行動を変えることで、少しずつチームは変わっていきます。
もしあなたがマネージャーなら、まず自分がこれらを実践し、チームに示してください。もしあなたがメンバーなら、自分の仕事の中でこれらを意識してみてください。
よいチームは、一人ひとりの意識と行動から生まれます。
あなたのチームが、より良いものになることを願っています。